アキラナウェイ

パトリオット・デイのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.5
マーク・ウォルバーグの映画だと思ったら違った。

もっと多くの人の群像劇であり、亡くなった4人の被害者(うち1名は射殺された警官)の物語であり、ボストン市民の映画だった。

2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件における爆破から犯人逮捕までの102時間を描く。会場の警護にあたっていたボストン市警のトミー(マーク・ウォルバーグ)は爆発現場で必死の救護活動を行い、亡くなった被害者の為に犯人逮捕を誓う。

監視カメラや上空ヘリからの空撮などが多用される事で増すリアリティ。緊迫感は一度も途切れず、事件発生直後はもちろん、市街地で起きた犯人との銃撃戦も恐ろしい程にスリリング。

マーク・ウォルバーグはヒーローを演じるのではなく、土地勘のある地元の警察官、一市民を演じている。ジョン・グッドマン、ケヴィン・ベーコン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハン、実力派俳優陣の演技が俊逸。特に市街地での銃撃戦は、J・K・シモンズが主役と言っても過言ではない活躍ぶり。

犯人は26歳と19歳の兄弟で、映画での描写はないが、爆弾はアルカイダが発行するオンラインマガジンから学んで作ったとされている。圧力鍋が使用されており、殺傷能力を高めるためにボールベアリングや釘などの金属片が含まれていたとされる爆弾。足元に置かれたバックパックの中で爆発した為、脚を失った人が多かったのだろう。何と卑劣…。

率直に申し上げて、泣けた。

「悪に対抗するのは愛」

そんな言葉を平常時に聞いたところで、何人の心に届くだろう。この爆弾テロ事件の渦中でトミーが語る事で、この言葉は何倍にも膨れ上がり、人々の心に届く。

その為、この映画を斜に構えて観るのは良くない。

犯人逮捕までは事件を同じ緊迫感で追っていき、トミーの言葉に胸を掴まれ、ボストン市民の結束力に驚かされる。物語が終盤、さり気なく愛の物語へと流れる様に変容する。

最後に映し出される亡くなった8歳の少年…。
大号泣しました。