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ワイルド・スピードX2のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ワイルド・スピードX2(2003年製作の映画)
3.8
 フロリダ州マイアミ、ストリート・レーサーたちは密かに秘密の場所に集結している。「道路封鎖中」の立て看板を置き、4つ巴の決戦がいま始まろうとしている。マイアミを代表するオレンジ・ジュリウス(『プリズン・ブレイク』シリーズのスクレことアマウリー・ノラスコ!!)、スラップ・ジャック(マイケル・イーリー)、女性No.1のストリート・レーサーであるスーキー(デヴォン青木)らが陣取っているが、もう1人のホアキンは夜勤で来られなくなってしまった。マイアミの街を取り仕切るテズ・パーカー(クリス・"リュダクリス"・ブリッジス)はホアキンの代わりにうってつけの男がいると話し、ある男に声を掛ける。携帯の着信音、「4分以内に来れるか?」というテズの問いかけに「稼げるのか?」と聞く男ブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)は約束の4分きっかりに秘密の場所へ現れる。LA警察在籍中、強盗団のリーダーだったドミニクを故意に逃がした罪で、ブライアンは一転して警察組織に追われる身になっていた。アメリカ各地を転々とし、一時的にマイアミに身を寄せた男のドライビング・テクニックは相変わらずぶっちぎりに速い。僅か数分で1万ドルもの大金を手にしたブライアンは意気揚々と帰宅の途に着くが、その過程でFBIに絡め取られる。そこにはかつての上司だったビルキンス捜査官(トム・バリー)が待ち構える。これまでの罪を免除する見返りとして、貿易会社を装う麻薬組織のマネー・ロンダリングの囮捜査を強要されたブライアンは、条件として幼馴染のローマン・ピアース(タイリース・ギブソン)をパートナーに指名する。

 『ワイルド・スピード』シリーズ第二弾。前作に登場したドミニク・トレット役のヴィン・ディーゼルは残念ながら出演はないが、ロブ・コーエンのもう一つのドル箱シリーズ『トリプルX』のような大失敗をしなかったのは、今作の骨子がもともとヴィン・ディーゼルのワンマンではなく、ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーのW主演のような体裁を保持していたからだろう。時系列も崩す例外的な次作『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』を除けば、今作はシリーズ唯一のポール・ウォーカーの堂々たる主演作になっている。スパイク・リーと90年代の黒人映画で人気を2分した『ボーイズ'ン・ザ・フッド』や『ハイヤー・ラーニング』、『シャフト』で知られるジョン・シングルトンの監督起用は、主役であるポール・ウォーカーを際立たせながら、要所要所に黒人俳優たちを配置し、黒人映画としてのプライドを誇示する。その立役者になるのは、ジョン・シングルトンの『サウスセントラルLA』で俳優デビューを果たしたタイリースと、「マイアミの顔」と呼ばれるほどの暗黒街での知名度を持つ人気絶頂のラッパー・リュダクリスの主役顔負けの活躍に他ならない。幼少期から人種を越えた親友関係にあったブライアンとローマンだったが、盗んだ8台の車がローマンの車庫から見つかった時から道を違えてしまう。ローマンは刑事になったブライアンを心底忌み嫌い、ムショに入れられた3年間、鬱々とした感情を抱きながら、ブライアンへの復讐の念を抱いて来た。そんな男が、ビルキンス捜査官の誘惑によりもう一度ブライアンの相棒となる展開は、カー・マニアや走り屋のみならず、男の子にとっては堪らない。

 マネー・ロンダリングやGPS発信機などの現代的なツールや事象を用いながらも、そこで描かれる物語は冷戦下の80年代末頃の物語をそのまま踏襲したかのように古臭いが、2000年代の物語としては新鮮に映る。前作では囮捜査官はブライアンだけだったが、今作ではローマンや女性秘書のモニカ・フェンテス(ライアン・ゴズリングの奥方のエヴァ・メンデス!!)に膨れ上がる。女ったらしのブライアンが前作のミア(ジョーダナ・ブリュースター)同様にモニカに入れ上げる事で、雇用主と組織の犬の間には女という葛藤が敷かれ、ブライアンは組織への忠誠、かつて裏切った親友との友情、ファム・ファタールな女との道ならぬ恋の間で葛藤を繰り返す。冒頭に登場したブライアンの車、日産BNR34 SKYLINE GT-Rのシルバーに塗装された美しさはシリーズ屈指の魅力を誇る。その他にもローマンが乗った三菱・エクリプス3代目スパイダーや同じくGPSのついた日産車から乗り換えたCT9A LANCER EVOLUTION VIIなど今作でも幾つもの垂を極めた国産車が続々登場する。前作以上にCG色の強いカー・チェイス映像は、実際にスタントマンたちが公道を走った20世紀のカー・チェイス映画の生の感触とは比べようがないが、テズとスーキーのアイデアにより、マイアミ中にクラシック・カーが溢れ出す馬鹿馬鹿しい展開は何度観ても素晴らしい。敵役のカーター・ベローン(コール・ハウザー)の影の薄さが残念だが、中盤のマイアミの警察官への恐るべき尋問だけが妙に胸に残る。Joe Buddenの『Pump It Up』に心底ブチ上がる黒人ならではのリズミカルで型通りな素晴らしい続編である。
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