藻尾井逞育

あの頃、君を追いかけたの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

あの頃、君を追いかけた(2011年製作の映画)
5.0
「テストなら難問にも必ず正解があるけど、リアルな人生には永遠の謎もある」
「恋はつかめないうちが一番美しい。成就するといろんな気持ちをなくしてしまう。だからもっと追っていてほしかった」
「俺もお前に恋してた俺が好きだ。俺のかけがえのない人」

1990年代、台湾中西部の町、彰化。頭の中はアレでいっぱい。将来のことを真剣に考えたこともない高校生コートンと、個性豊かな仲間たちは、くだらない悪戯で授業を妨害する毎日を過ごしていた。担任からお目付け役を仰せつかった女生徒チアイーを疎ましく思いながらも、次第に胸がざわつき始め…。

台湾の高校生と日本の高校生、似ているような似ていないような。そもそも自分は男子校出身なので、カワイイ女の子に背中を青いペンでツンツンされた経験なんてあるわけがないです。なのに、映画の中の出来事の一つ一つを見ると妙に懐かしい気持ちでいっぱいになりました。小説家で、この映画の脚本、監督をつとめたギデンズ・コー監督の自伝的作品だそうですが、監督自身の実際には叶うことのなかった思いに対して繊細かつ執拗にこだわりぬいていることが感じられます。そのためフィクションではあっても、登場人物一人一人の行動や発言に、当時の監督のリアルな感情が投影されています。また不快に感じる人もいるでしょうが、青春にはつきものなのに不自然に避けていた下ネタをあそこまで臆面もなく繰り広げていることが、この映画をコメディタッチではあるもののよりリアルなものにしています。これらのリアルさがあるから、実際には体験したことのない映画の中の出来事を通して、見る人すべてに青春時代特有の繊細さと幼稚さを思い出させるのでしょう。
青春時代、あの頃はいつも女子の方が早く大人へと先に行ってしまうので、バカな男子はいつだってその後を追いかけざるをえなかったです。彼女に追いつきたいのに、どう追いついたらいいのかわからずにいました。一方、女子のほうもなかなか追いつかない男子と自分自身に対して不安に思っていたんですね。そんな過去の自分へのもどかしさを経験するあの頃があるから、人は大人へと成長できるのかもしれません。

2024/04/03
台湾加油!