キャッチ30

新しき世界のキャッチ30のレビュー・感想・評価

新しき世界(2013年製作の映画)
4.1
 潜入捜査官が巨大な犯罪組織に潜入し、危険な任務を遂行する。映画ではよく使われる設定だ。『インファナル・アフェア』や『フェイク』がこれにあたる。『新しき世界』もこの系譜に連なる。

 ジャソンは韓国最大の犯罪組織ゴールドムーンに潜入して8年になる。彼の素性を知っているのは上司のカン課長とコ局長、連絡係のシヌだけだ。ジャソンは組織の中で頭角を現し、今では自分と同じ華僑である兄貴分チョン・チョンの右腕だ。ジャソンはカン課長からの命令とチョン・チョンとの絆の間に揺れ動き、苦悩する。
 
 そんなある日、ゴールドムーンの会長ソクが交通事故で急死し、跡目争いが勃発する。有力候補は実質的NO.2のチョン・チョンとソクの右腕だったジェボム組出身のイ・ジュングの二人だ。カン課長は「新世界プロジェクト」と名付けられた作戦を実行する。それは跡目争いに介入し、組織を壊滅させるというものだった。

 ジャソンの周囲にいる人物は冷酷な人間ばかりだ。カン課長はジャソンの妻の素性を理由に彼を監視させる。ジュングは狂犬とも言えるほど血の気が多い。カメラを壊す場面は『ゴッドファーザー』のソニー・コルレオーネを思い出す人も多いだろう。そして、チョン・チョンもとぼけた表情とは裏腹に計算高くて残酷な本性を秘めている。これらの人物に囲まれて、ジャソンはさらに追い詰められていく……。

 監督のパク・フンジョンは潜入捜査官の苦悩と組織の非情さをあぶり出していく。権謀術数と血で血を洗う抗争が展開されていく。地下駐車場からエレベーターに至る乱闘は目を見張る。