KnightsofOdessa

月の寵児たちのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

月の寵児たち(1985年製作の映画)
3.5
[] 70点

1984年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。オタール・イオセリアーニ特集上映配給のビターズ・エンド様よりご厚意で試写を観せていただく。オタール・イオセリアーニ長編六作目。ダルメシアンを飼う夫人は科学者が好きで、科学者は美容師が好きで、美容師は警察主任と不倫してて、警察主任は空き巣にあって、科学者はテロ組織に爆弾を売って、美容師の実家では爆弾マニアが集会を開いていて…云々とパリの街で様々な人物が交錯する。のほほんとした空気のまま地続きでテロ組織とか爆弾とか強盗集団とか登場したり、普通に人が爆死したり、警察主任の子供たちが普通にタバコ吸ってたり、という中々極悪な世界が広がっていく。世紀末のフランスとこの冷たさ、ゴダールの『フォーエヴァー・モーツアルト』を思い出す。中心で扱われるモチーフは、古くは普段使いされていたのに今では高値で取引されているアンティーク皿と、盗まれるごとに大きさが減っていく絵画であり、初長編『四月』から通底する物質主義批判も展開されている。ジョージアからパリに移り住んで始めての長編作品らしいが、自分のスタイルは継承している。
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