イチロヲ

昼顔のイチロヲのレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
4.0
マゾヒストとしての性的嗜好を燻らせている上流階級の夫人が、秘密裏のうちに娼婦として働き始める。性的嗜好の多様性を語っている、エロティック・ドラマ。

娼館というのは、従事する女が客人の恋人役を演じることにより、客人に癒やしを与えていくという、「虚構の世界」を愉しむための場所。本作の主人公は、夫では満たされない情欲を、娼婦の姿を介して充足させていく。

娼館に単独で入ろうとするときの主人公のまごついた言動が、男性が性風俗に初めて入ろうとするときのそれと同じところが笑える。客人のことを「性に乱れた堕落者だわ!」と見下していたはずが、いつの間にか客の嗜好に同調する立場になるところも面白い。

「子供をつくりたいと言ってくれ」と切望する夫に対して、ノーコメントを決め込む主人公。子作りだけがセックスじゃない。子作り以外の、快楽を貪るためのセックスもあるということ。ブニュエルが無神論者であることを踏まえながら鑑賞するスタイルが最適。
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