んぎ

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのんぎのレビュー・感想・評価

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男性至上主義の映画史において見落とされてきた、強いて言うなれば"生活"としか名付けようのない、でもたしかに(幾多の"男たち"のドラマの裏側で)流れていた時間を掬いとる試みとして、ここまでの着眼点の鋭さをそなえた作品はそうそうないのではないかと思う。定点カメラのじれったさはやがて観客の時間感覚までも失調させ、スクリーンにはねっかえる光彩が果たして朝のものなのか夜のものなのかさえわからなくなってくる始末。あのリビングルームの青い光はなんなんだ。梗概を語るとき、たとえば「日常と地続きの狂気」というアウトラインを引くのはたやすいが、200分という決して短くない時間をかけてそこへと至る過程に思いを馳せることのできる仕掛けの豊かさこそが白眉であり、それがこの映画を数段深みのあるものに仕立てあげているのは言うまでもない。
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