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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのsukeのレビュー・感想・評価

4.5
逆パターソン。日常系の根拠なき楽観主義に対するアンチテーゼのようで、母という立場や家庭という監獄にとらえられ、喜劇にも悲劇にもならないただ生きるための「生活」を強いられることのフラストレーションとその爆発が結果的にもたらす悲劇。家事や家事の合間の様子のディテールに強く共感したが、社会的な立場や家庭の状況、そして性別の違いにより簡単には共感したとも言いにくいものであると想像する。神経質なまでの明かりの消灯・点灯のアクションの反復は、映画の中でそのアクションの主体が、照明などに気を遣わずに映されに行ってない感じを強く出し、またカチッとしたフィックスの画角の中で計算された美しい構図を成すように動きながらも、必ずしも顔が主体的に前面に映るようなものになっていない点で、観察しているような効果を出している。また、人物が見世物的に見られることを拒否しているようにも受け取れる。
1日目から3日目に至るまでの、フリと違和感、そして異変、緊張状態からの解放の展開がすごかった。
アニエス・ヴァルダの冬の旅、バーバラ・ローデンのワンダほか、それらのフォロワーであるケリー・ライカートなどの作品をとりまく昨今の状況をみるに、これまでメジャーなものとしては通じきらなかった声に改めて周波数が合わされるようになってきていると感じ、また映画というメディアの意義を改めて考えさせられる。
キッチンや寝室のシーンに顕著だったが、圧縮効果などレンズの使い分けが全編にわたって強く効いている感じがした。
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