不在

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンの不在のレビュー・感想・評価

5.0
男性の仕事に関する映画はありふれているのに、女性の家事についての作品は存在しないということで本作は作られたそうだ。
その家事という行為は、毎日同じ事の繰り返しで変化がなく、非常に抑圧的だ。
そしてこの約200分という時間は、彼女が長年経験してきた束縛のほんの一部でしかない。
それによって育てられた我々が、この上映時間に文句を言っていいはずがないだろう。

家事というのはあくまで家族のための労働であり、自分の人生を支えてくれるものではない。
彼女は笑うことすらとうに忘れ、やがて日々のルーティンも遂行できなくなる。
社会という鳥籠に閉じ込められ、飛び立つこともできない。
彼女が望んだものは、お金や安定、ましてや支配などではない。
ただありのままの人生、自由が欲しかったのだ。
それを奪ったのは、一体誰なのだろうか。
不在

不在