馬刺し

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンの馬刺しのレビュー・感想・評価

4.4
ある1人の女性の生活を描いた映画。
まるで覗き穴から人の生活を丸々観たような感覚だった。
執拗なほど丁寧に切り取られた定点観測は映画を長く、そして退屈にさせているのだが、「無駄に長い」という点はマイナスではなく、むしろリアリティを演出する上でかなり効果的だった。
ゆったりとした時間のなか、ほぼ静止画の映像の中で時折見せる彼女の小さな心の揺らぎ、放心、細かい仕草ひとつひとつは際立ち、考えさせられるものがあった。この映画を最後まで観るとその答え合わせのようなものができる。

また、この映画はセリフはほぼなく、劇版は一切ない。その中で目立つのは生活音。ドアの軋む音、料理の音、ガスの音などなど。普段、スマホなどで動画や音楽に囲まれた騒々しい生活をしている僕にとっては本来、「営み」ってこんなに静かなものだったんだと思わされた。また、彼女の生活にはルーティンがあり、生活音にも独特なリズムがある。聴いていて心地が良い。ラジオから流れるクラシックや、歌がいらないものに感じるほど。
また、主人公の「手」や「背中」には1人で子供を育ててきた強さ、逞しさを感じた。

かなり質素な映画なので、途中でリタイアしてしまうこともあるかもしれないが、その退屈さを噛み締めながら最後までぜひ観てほしい1本。

鑑賞後に僕は評価爆上がりしました。



ここからネタバレになります。










カブトムシみたいなSEX、泣き続ける赤ん坊に思わず笑ってしまった。本来めちゃくちゃシリアスなシーンなんだけど。

胸糞映画で有名な「ダンサーインザダーク」を想起させるような胸糞映画。しかし、こちらは音楽は一切ないので内容は正反対と言っていい。
ラストシーン。とてもよかった。明かりのつかない電球。止まった女。それでも車は走っている。それでも時間は過ぎていく。

息子との会話、失敗したジャガイモ作り、妹からの手紙とプレゼント、埋まってしまった特等席、不味いコーヒー。全て伏線。
馬刺し

馬刺し