猫マッチョ

梅田優子の告白の猫マッチョのレビュー・感想・評価

梅田優子の告白(2008年製作の映画)
5.0
2019年度お気に入り映画底上げ名作映画

『カメラを止めるな』にも関係しているが邦画は歌舞伎や能の影響も強いことからもう一つの現実である虚構を作る文化となっていて、簡潔に書けば民族の長老の戒めの話のような虚構を作り上げるのが得意であって、観る側も映画から『教訓』を得ようとしている。通説では邦画は特撮とアニメと時代劇が得意である、とあるがこの3つに共通するのが完璧な虚構で出来る世界である。

この映画の上映時間は60分で映画というよりはテレビドラマと同じ尺で構成されているが、通常のテレビドラマと比べて虚構の作りこみ度が全然違う。

1にテレビのドラマスペシャルは制作予算がこの映画より多く使っているため、俳優も豪華であちこちにロケ地が飛んでストーリーが展開する。この映画は予算が絞られているために、ロケ地が固定されている。ロケ地が固定されているからこそ、このストーリーの筋であるアラサー風俗嬢である主人公の漠然とした未来と老いへの不安を演出していると思う。堅気な職業で無い人物でも同じような毎日を年を重ねるだけで過ごしている異様さが固定されたロケ地で表現しているのは偶然だとは思うが、よく作りこまれている。

2に起承転結の練りこみ度が違う。話の筋はドラマも映画も通っているが、ドラマは時代考証や有名俳優の配役でストーリーの流れが歪んでしまう。脇役なのに有名俳優を配置しているのが原因で悪目立ちしたり、サスペンスでは犯人の目星が登場人物の紹介で予想できてしまう。また、時代考証や史実が原因で起承転結でなくて、起承承集となっていて物語の転化ではなくなっている。「転」の句は、「承」のそれと表裏一体であり、別物であってはならず、互いに応じ、互いに避けるという一貫性がなければならないとする。とあるように物語の本筋と逆方向に流れることが転化である。この映画の転化の着目点がほかの映画とは違っているのが賛否分かれると思うが、個人的には成功例だと思う。

女性ながら邦画にも天才の監督が存在したと思わせる映画だったのにも関わらず一線で活躍して無いのは大きな損失である。
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