一粒万倍日

小さいおうちの一粒万倍日のレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
3.9
山形の雪深い山奥から、東京郊外の赤い屋根のモダンな家の女中として働くことになった純粋なタキ(黒木華)さん。

小さなおうちの主の奥様(松たか子)に仕えることが生きがいとなっていく。
おもちゃメーカーの役員である高圧的なご主人に従うという家庭環境下、来客も多く、奥様の家仕事も多いため、タキは奥様にとって必要な存在となっていく。

タキも、素直に奥様の幸せを願ってマメに日常の仕事をこなすだけでなく、お坊ちゃまの通院にも尽力し快方への力となった。

奥様にとってタキは必要な存在であり、タキにとっても「奥様の幸せを願って」仕えていることが喜びとなり、お互いに良い関係いであった。
「この人のためなら」と思える存在。
それだけ、奥様は美しく人間的に魅力的な人だった。

ひたすら奥様のためを思って、真面目に仕えているタキを演じている黒木華さんの演技がピッタリでいじらしくて心地よい。

私は、同性愛というよりも師弟愛のように感じています。

都会の裕福な暮らしの家仕事を教えてもらい、仕えることで自分がその家に必要な人となっていく。

タキはただただ奥様の幸せだけを願っていた。
だから手紙を渡さなかったんだと思うけど、東京の空襲で奥様が亡くなったと知った時、奥様の気持ちを届けなかったことを悔やみ悲しむことに。

映画は一人暮らしとなった60年後のタキさんの回想物語を、甥っ子の子供(妻夫木聡)が引き出していくという、現在と過去を行き来しながら展開していく。

生涯独身で独居の身ではあるけど、甥っ子の子供に頻繁に家に寄ってもららい過去の話に興味を持ってもらったり、また料理の腕をふるいって美味しいと喜んでもらったりと、孤独な晩年ではなかった。

そんなタキさんの生涯。
黒木華さんの素直で純粋な奉仕の愛情が、特に印象に残った映画でした。
山田洋二監督の時代考証も流石です!