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警視庁物語 深夜便130列車のcatmanのレビュー・感想・評価

警視庁物語 深夜便130列車(1960年製作の映画)
5.0
1960年公開。シリーズ中期にあたる第12作。全24作のうちいよいよ23作まで観終えた後に、これだけすっ飛ばしていたことに気付いた。アブネー! 後期にはもう顔を見せなくなる佐原広二や中山昭二といった懐かしいメンバーに再会してちょっとテンションが上がる。

汐留駅の貨物倉庫に取り残された荷送人・荷受人不明のトランクから下着姿の女性死体が見つかるオープニング。本作最大の特徴は鉄道が主要舞台になっていることで、普段にも増してロケ撮影の効果が発揮されていると同時に鉄道特有のシステムが脚本の核心に絡み、終盤へ向けて緊張感がグングン高まるというスリリングな展開が素晴らしい。3人の刑事が大阪へ出張して現地の刑事たちと共に捜査を進める序盤も面白いし、伊勢湾台風で甚大な被害を受けた名古屋の干拓地のロケシーンも印象深い。加藤嘉、菅井きん、谷本小夜子、八代万智子、不忍鏡子、織本順吉といった端役オールスターズも登場して嬉しくて、特に小宮光江が持ち味を活かした役を印象的に演じていてオレ大満足。それと珍しく長田刑事の小学生の息子が登場、演じている子役はなんと風間杜夫らしい。ジャイアンツの野球帽を被っていて、選手のブロマイドを買いたいからお小遣いちょーだいよおなどとせがんでいる。プロ野球の話題はこの他にも何度か出てきて、今井健二が怪しい関西弁で演じる大阪の刑事は南海の大ファンだという。阪神ちゃうんかい。他にも本筋に直接関係は無いが時代背景を映し出すちょっとした会話が幾つも積み重ねられていて作品全体に現実味を与えている。

全編を覆う乾いたドキュメントタッチとここぞと言う瞬間のドラマチックな演出が素晴らしくって、クライマックスで中山昭二が電車内で犯人に静かに接近するほんの数秒の移動撮影&クローズアップカットなんかは画力が強くて痺れる。からの、未明のホームを全力疾走する犯人と刑事達のチェイスシーンへ移行する際の爆発力も天晴れ。ラストの余韻も味わい深い。監督の飯塚増一が本シリーズで計4回も起用されていることにも納得の傑作であった。80分。
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