かなり悪いオヤジ

舞妓はレディのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

舞妓はレディ(2014年製作の映画)
3.4
無理やりなタイトル、きっつい訛り(津軽弁&鹿児島弁)の田舎娘、言語学教授、そして、極めつけはミュージカルという飛び道具まで使っている、変てこりんな映画なのだ。これはなんかあるなとWikipediaを調べてみると、オードリー・ヘップバーン主演のヒット・ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の舞妓さんバージョンであることが判明し、スッキリ。タイトルはオリジナルの文字りやて、かなわんわ。

舞妓を目指して上京してきた主演の上白石萌音がお色気レスな代わりに、周防監督の愛妻草刈民代の熟女フェロモンが半端ない。冒頭、緋牡丹が刺青された肩をはだけたかと思えば、これがまさかの金のしゃちほこポーズ♥️、さらに、日本舞踊からのフラメンコで豊乳を左右に激しく揺らす大サービス付きだ。さすが日活ロマンポルノ出身の周防監督、エロ描写には確かな技術力を感じるのである、ほんまに。

オリジナルの『マイ・フェア・レディ』も確か『ピグマリオン』というバーナード・ショーの戯曲が元ネタになっていて、その『ピグマリオン』もまたギリシャ神話が元ネタになっているらしい。要するにリメイクしやすい題材なのだ。彫刻家のピグマリオンが自分の彫った女の彫像に恋をして、側を離れられなくなってしまう一種のフェティシズムをテーマにしている。言い換えると“自分好みの女に育てあげる”という、フェミニストが聴いたら卒倒しそうなマチズモ的意図が背後に隠されているのである、うそやろ。

『マイ・フェア・レディ』をご覧になっておわかりのように、元ネタはレックス・ハリソン演じる言語学教授が、オードリー・ヘップバーン演じる田舎娘の発音を矯正するため、かなりサディスティックなレッスンを施すのである。ヘップバーンにお預けをくらわしたお菓子を九官鳥に与えたり、正しい発音をすると🔥が激しく吹き上がるヘンテコな装置でヘップバーンが火傷しそうになったり、飴玉をいくつも口に頬張らせたり、やりたい放題なのである、いけずやなぁ。

その点、本作の“ゴキブリはん”こと言語学教授役の長谷川博己はかなりジェントルマンで優しいキャラ。舞妓はーんになるための厳しい修行は、踊りのおっ師匠はん中村久美に引き継がれているのである。「御居処(お尻)を落として💢」舞妓としての技術がなかなか身に付かない不器用な上白石萌音を激しく叱責するのである。ストレスがたまってイップスで声が出なくなってしまう萌音。イジメられキャラとしては上々の出来で、この点では合格点をあげてもいいだろう、おきばりやす。

長谷川博己のアシスタントをつとめる濱田岳が劇中指摘していた“水商売”としての後ろ暗さを全く描かなかったのは、やはり現在の日本の世相を表しているのだろうか。女を性奴隷としか見なしていない旦那衆がどこを探しても見当たらない、錚々たるベテラン俳優がカメオ出演していたにも関わらず、である。個人的には、花売り娘→売春婦に置き換えた『プリティ・ウーマン』や『マイ・ファニー・レディ』の方によりリアリティを感じるのだか、どうどすやろ。