OASIS

ブランカニエベスのOASISのレビュー・感想・評価

ブランカニエベス(2013年製作の映画)
4.0
産まれると同時に母を亡くした天才闘牛士の娘が、父と再婚した意地悪な継母に虐げられながらも小人達との巡業の旅の中で闘牛士としての才能を開花させて行くという話。

グリム童話の「白雪姫」を基にしたモノクロ・サイレント映画。
童話的な世界を実写に置き換えると途端に人間臭さが前面に表れて嫌になるが、この映画に登場する継母の醜悪さは群抜いている。

娘の大事なニワトリを料理して食事に出したり、父親を事故に見せかけて殺したりと意地悪というレベルを超えているのだが、それを何故かコミカル風に演出しているのでブラックな笑いが溢れてくるのだ。
特にスープにニワトリの顔が浮かぶ映像なんかは「今のどんよりと暗い状況に合わないんじゃないか?」というチグハグさが生まれる為笑っていいのか非常に迷う。
娘が成長して小人の闘牛団を結成する辺りからは、その演出がやっとトーンにマッチし始めてくるのだが。
ただ、娘が大人になる瞬間に洗濯物に映る影が次第に大きくなって成長を遂げるシーンの鮮やかさはなんとも美しい(この場面は巻き戻して3回観た)。

小人達と出会って闘牛の巡業を始めると、彼女は白雪姫(ブランカニエベス)と名付けられ、一躍スターに。
その裏で小人達は文字通り見世物(フリークス)的な扱いをされている辺りにもブラックさが漂うが、後半になるとこれはそういう映画なのかと受け入れる事が出来た。

サイレント映画ゆえに、字幕による説明と回想によるフラッシュバックが多用されて若干クドいなと思っていたが「牛から目を離すな!」という父親の言葉が情熱のリズムに重なる瞬間には熱さを感じて滾る。
動けない父親とのコミュニケーションが丁寧に描かれていたのでこれには素直に感動した。

「出た!毒リンゴだ!」と満を時して登場する継母に「やっぱり白雪姫に準じた展開だったか」と落胆するも、その先の結末がかなり予想外。
こんな切なくて報われない童話があっていいのだろうか?と驚愕すると共に、ラストシーンのあまりにも美しい涙に声が漏れた。
「誰も見たことのない物語」というキャッチコピーに相応しい驚天動地のひっくり返りしを是非目撃して欲しいと思います。

涙の粒を際立たせる為のモノクロ・サイレントだったのかとは思うが、鑑賞中は特にその作風の意味が深く感じられなかったのが残念だった。
闘牛場の荒々しく舞い上がる砂煙や会場の熱気等も無音の中では感じる事も出来ず。

しかし、ペドロ・アルモドバルが絶賛する気持ちもおおいに理解出来る良作ではあると思います。
なんてったって、この映画には彼のあの作品の影響を多大に感じますからね・・・。
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