セキ

美しい夜、残酷な朝のセキのレビュー・感想・評価

美しい夜、残酷な朝(2004年製作の映画)
3.9
この手のオムニバスは目当ての一本と予想外の一本くらいしか面白いものがないものだが、今回は3本どれも刺激的で楽しい短編で驚いた。

パクチャヌクの『cut』は、編集とカメラワークがとにかく上手い。もちろん変なことをしている。そしてそれが変で終わることなくちゃんと機能している。本当に短いカットが一瞬だけ差し込まれるモンタージュは格好の良さと恐怖を絶妙なバランスで演出してしまうし、広い空間と広角レンズで捉えるカットはある場面では皮肉っぽい笑いを、ある場面では淡白な不気味を作り出してしまう。とにかく映像的センスに優れた監督だということはよ〜くわかった。奥さんが怖かった。初めて言葉を喋るところも笑えもするはずなのに怖い。怖くないはずなのに怖い。

三池崇史の『box』はこれまた異色作で、こちらもルック的な面でのセンスがこれでもかというほどにキマっていて、三池作品を『ゼブラーマン』くらいしか観たことがない私からしたら所謂三池の最高時速を観れたような気がして満足だった。とにかく雪が綺麗で、炎とのコントラストは「お前どこでそんなヨーロッパみたいなセンス手に入れたんだよ」と言ってやりたくなるくらい鮮やかで美しい。『cut』に比べるとわかりずらいし、音もでかいのか小さいのかよくわからないけど、この頃の邦画の重厚感やアート路線という意味では非常に素晴らしい出来だったと思う。

さて『dumplings』である。これは3本の中で最も問題作だと思う。個人的にストーリーでは一番好きだった。食べると若返る闇の餃子、その中身とは、、。なんていう話だが、この発想が非常に気持ち悪いし、こんなものを映画にして世界に届けようなんていう事を考えてしまった時点でもうお前は狂ってるんだよと私は思う。キャストもとても良いね。餃子を食べる時のコリコリするような音が特に良かった。とりあえず今日はこれから餃子を食べに行こうかと思っています。

最高の3本でした。演出センスという意味では平均値として最高スコアを叩き出しているオムニバス作品だったと思います。
セキ

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