なちゅん

僕が星になるまえにのなちゅんのレビュー・感想・評価

僕が星になるまえに(2010年製作の映画)
3.7
末期がんに苦しむジェームズと親友たちの最後の旅。最期の旅。
哀しくて美しくて、馬鹿馬鹿しくて愛おしい。どうしようもなくやんちゃな少年たちがそのままうっかり大人になってしまったようで、その心のちぐはぐさが自分の中にもあって、だから泣くとか以上に胸が苦しくなる。

ジェームズの最後の決断は、いつからなされていたものなんだろうか。最後の瞬間まで何かを、それが痛みだったとしても、最後まで感じていたいのだという言葉は、彼の尊厳を示す。そうさせるわけにはいかないと思う親友たちの心は痛いほどわかるけれど、マイルズはそれをも越えて手を放す。そんなマイルズの気持ちもわからないでもない。死を前にして恐怖と安堵を同時に抱えながらも高慢ないつもの自分を保とうとするジェームズと、尊大だけれど誰よりも心に闇を抱えているマイルズにしか分からないことがあったのだと思う。
今作が初主演ながらカンバーバッチが名演。マイルズを演じたJJ・フィールズの喪失の表情が素晴らしかった。

悲しいのに、声を上げて泣くような映画ではなかった。
ただ生と死にぼんやりと想いを馳せ、静かに思考を巡らせるような、心に重しをするような映画だった。
なちゅん

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