川田章吾

ランボー3/怒りのアフガンの川田章吾のレビュー・感想・評価

3.5
面白かったが、ランボーシリーズは時代の「読み」がことごとく外れている点が惜しいし、それがこのシリーズをコメディに見せてしまうんだよなぁ…。

先ず、ランボー1はベトナム戦争帰還兵が患ってしまったPTSDをテーマにしている。
クリントン・イーストウッド監督が描いた『父親達の星条旗』や『アメリカン・スナイパー』にもこうした兵士たちの苦しみは描かれている。
イーストウッド監督の映画が兵士たちの苦悩を描いているのに対して、この作品は苦悩から帰還兵が乱射事件を起こしてしまう「抵抗」も描いている。しかし、帰還兵は「苦悩」をしても社会を驚かせるような「抵抗」はほとんど記録されていない。

また、ランボー2はベトナム戦争後に問題化されたアメリカ兵の捕虜がテーマとなっているが、これも後に事実ではなかったことが発覚している。

そして、今回のランボー3はロシアのアフガニスタン侵攻とそれに戦うイスラムゲリラを描いているが、当時このイスラムゲリラ(ムジャヒディン)をアメリカは支援していたが、組織していたのはパキスタンの組織である。そして、このムジャヒディンが後にタリバンやアルカイダを生む。

もちろん映画は現実をデフォルメすることはままあるが、このシリーズは社会的なテーマを扱っているにも関わらず、歴史的事実と余りにも乖離してしまっているため、その事実を知っている現在の観客には「明らかな嘘」に見えてしまうのだ。

特にランボー1は、ベトナム帰還兵とアメリカ国内に住む人々との現実と理想の乖離を描き、その上でのアクションなので、歴史的考証が間違っていても、真理が描かれていて映画としての説得力はある。
しかし、2,3はそうした真理はなく、テーマが誤っているため、白けてしまう。
川田章吾

川田章吾