イチロヲ

沙耶のいる透視図のイチロヲのレビュー・感想・評価

沙耶のいる透視図(1986年製作の映画)
3.5
写真家として活動を続ける男(名高達男)が、ビニ本を製作する若手編集者(土屋昌巳)から、美しい女性(高樹沙耶)をモデルにした撮影の依頼を引き受ける。女性を被写体として見ていた男が、本質部分を見つめるようになる系統のエロティック・ドラマ。

性的不能、近親相姦、スワッピングといったモチーフを用いながら、人間の性衝動とそこに付随する心的外傷を描いている作品。高樹沙耶を売り出すためのプレゼン的作品とも言えるが、自己省察を淡々と見せられるダウナーな内容になっている。

男優陣では、一風堂休止後のソロワークに入った土屋昌巳が、若い編集者役を熱演。中性的な容姿と辿々しい台詞芝居がポジティブ方向に活かされており、不能に陥った男の悲壮感と屈折した人間性が、しっかりと滲み出ている。

惜しむらくは、心を塞いでいる人間に対して、大声で怒鳴りつけたり、力でねじ伏せたりする場面が、あまりにも多いところ。フィクションの世界では、それで通用するのかも知れないが、現実世界では逆効果なので止めたほうが良い。
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