Koshii

スーサイド・ショップのKoshiiのレビュー・感想・評価

スーサイド・ショップ(2012年製作の映画)
3.3
雰囲気は良い!非常に!
ティム・バートンのような世界観で、有り得そうなifをアニメーションに落とし込んだ作品。


絵のタッチと、タイトルのインパクトにつられ鑑賞することに。

それではあらすじをどうぞ!

人生を絶望することに慣れてしまった世界。消味期限を過ぎた途端に廃棄されてしまう食品のように、人々は自殺を図る。

そんなどんよりとした空気が立ち込める中、唯一潤っているお店があった。
それが「スーサイド・ショップ」である。

全生物の内、人間のみに与えられた自死の権利を、せめて彩らせてあげようと、多種多様の自殺道具が取り揃えられたお店。

ある日、死の匂いが立ち込める店内で、皮肉にも新たな命が宿ろうとしていた。後にその子はアランと名付けられ、このお店のオーナーである夫婦の3人目の子供として、すくすくと成長する。

しかし、お客に死を売る仕事をする身として、喪に服す態度に気を遣わなけばいけない中、アランは何処か陽気で笑顔が絶えない。

そんな彼と両親との価値観は乖離していく一方で、、、


以下、ネタバレを含みます。













こんな世界あるかもしれない。率直に面白い設定だと思ったし、世の中が死に対して鈍感になっていくのも、これだけ絶望に溢れた世界なら有り得そうだなと感じた。

あえて、生きる希望ではなく、死に方くらい選ばせてあげるようというお店の理念も、倫理観は一旦置いといて、共感できる。東洋から西洋、散弾銃のようなものから、カミソリの刃までなんでも揃うお店。

こんなお店があれば、自分以外を巻き込んだ犯罪が横行しそうなものなのだが、銃の弾丸を購入した人でさえ、自分に向けてその弾を放った。
恐らく、そのような犯罪もある意味では人助けになり得、絶望が一周回ったその先の世界ということなのだろう。

この物語では、アランという男の子が希望の光となって、生きることの大切さを周知させようとアイデアを捻る。最終的に、生きる希望を売ることに決め、ハッピーエンドのような形でオチる。(割と倫理観は欠如してませんでしたね。)

このエンディングが個人的には残念でならない。人生のまだまだスタート位置にいるアランに心を動かされたとして、現状を維持的に塗り替えれたとして、それは永続性のあるものなのだろうか。

絶望の中に、死ぬという選択肢を得た人が、このクレープのお店を見て何を思うだろうか。そんな人たちの憤りの矛先はこの家族に向かうべきだろう。

このクレープのお店が盛況となり、これからは生きる希望を売ろうと新たな志をもった家族が、そのような者たちによって惨殺されるという終わり方の方が幾分か良かったのではないかと思う(できるなら、自殺用の道具で)。


あまりにも、この世界では生きる希望なんてそぐわないし、この作品の終わり方は安直すぎた。


追記、原作のラストとはかなり違っているようで、アランの自殺で終幕するみたい。
この終わり方なら、まだ救いのある終わり方かも。
Koshii

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