このレビューはネタバレを含みます
自分の人生が肯定されていたことに気が付くステキなお話。
努力していい方に生き方が変わった話でもあるわけですが、変わる前から主人公は立派に生きていた。
そのことを主人公は幻のネガでハッキリと知る。
でもそれになかなか気付けない。
それに気付けたのは思い切って最初の一歩を踏み出したからこそ。
ある意味自分探しでもあるわけですが、主人公自身そんなつもりはサラサラない所がすごくいい。
主人公の弱さを妄想癖という形で表現して、彼がリアルな体験を重ねる度にその妄想がなくなっていくという見せ方もよかった。
それでいて、否定的な要素としての妄想も面白おかしく見せるセンスはさすがの千両役者。
未公開シーンも全部使えばよかったのに。
父親との思い出絡みのエピソードは、諸般の事情によりグッとくるもの多数。
「パパジョンズ」に居られなくて思わず外で電話するシーン、二度と使うはずのなかったバックパックでネガ探しの旅に出るシーン、二度と使うはずのなかった手帳に書かれた、父親が書いたたった一言の言葉を再度見るシーンには思わず涙。
父親との思い出が詰まったスケボーに関しては、
最初から一切妄想に頼らないところがいい。
かつて父親がしてくれたように、好きな人の子どもとスケボーで交流するところはグッときました。
幻の25番ネガに映っていたもの。そこまでの流れから、観客はそれを知ることなく終わるか、真っ白の写真かなと思ったけど、いい方に裏切られた。
あんなん、頑張ってきた人が見たら泣きますわ。
見てる人は見てる。
ショーンペンはクセのある職人役が似合いすぎ。
嫌味な企業再編担当者も、最後に主人公のハッパを受けて、最終刊の表紙に小粋なメッセージで応えるところもいい。
これらを押し付けがましくなくサラッと見せる流石のベンスティラー。
BGMのセンスも◎。
北欧を旅したくなる爽やかな一作。