小便小僧

ラストエンペラーの小便小僧のレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.3
もう少し予備知識があるとよかった。(勉強不足、、、。)ただなくても面白い作品。話の中心は勿論ラスト・エンペラー=溥儀。しかし皇帝が最後になるということはその周辺の人々(婉容、宦官などなど紫禁城の人々)も変化を被るわけで、その変遷も興味深い。家庭教師の話す、彼(溥儀)は孤独であった、は清朝の解体前後だけでなく、生涯を通して孤独であったように思う。非凡であることは異端であることを強烈に意識させる。
最後の蟋蟀は何を意味するのか。溥儀が隠し持っていた鼠は閉じた紫禁城を前に死んでしまうが、即位の際に得た蟋蟀は戦後中国の動乱ののちも瓶の中で生き延びていた。エゴイズムを持った近代的個人としての溥儀(≒鼠)は死に、人に与えられるもの、いいかえれば彼が拒否した利用されるものの象徴としての皇帝/溥儀(≒蟋蟀)は生き延びるということか。
とすればどことなくハッピーエンドの様に描かれるラストは、歴史の犠牲となった溥儀が犠牲としての生を肯定するようになったことを意味しそうだ。溥儀に追従したとされ、罪人として扱われる「先生」に再会する描写考え合わせれば誰しもが歴史の犠牲となり、溥儀の特異性が普遍性へと切り替わったことで起こった転換の様にも思える。
近代中国史をもう少し勉強してもう一度見てみたい。
小便小僧

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