小便小僧

リップヴァンウィンクルの花嫁の小便小僧のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

うだつの上がらない主人公・七海マッチングアプリで出会った彼氏と結婚するも別れさせ屋に別れさせられ(何でも屋・詐欺師の安室談なので真偽不明)、山奥のお屋敷でメイドをするところから奇妙な物語が始まる。お屋敷の主・真白は安室に一緒に死んでくれる人を探すよう依頼していた、というのがことの顛末。救いようのない結末、との感想も見かけるが、大声を出すのが苦手な主人公が大声でお礼を言うなど社交性を持つようになり、なんとなく快方に向かって終わった気がした。
「リップ・ヴァンウィンクル」といえばワシントン・アーヴィングの短編。洋風の浦島太郎物語ということで鴎外が『新浦島』として翻訳したことで知られる。山で酔ったリップが街に帰ると、親友は歳をとり、アメリカは独立し、恐妻は亡くなっていた、というもの。『花嫁』ではリップ・ヴァンウィンクルの名は真白のハンドルネームになっている。七海は「クラムボン」から「カムパネルラ」へとハンドルネームを変えているが、親友を助けて死んでしまう「カムパネルラ」に相応しいのはむしろ真白のようにも思う。「リップ・ヴァンウィンクル」の名もまた、寝ている間に真白を失った七海に近しいのではないか。
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