1984ok

ラストエンペラーの1984okのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.2
4Kレストア版で、社会科の課題で何かで観させられた中学生の時振りに鑑賞。やはりこのラストに勝る余韻は他にないなと、当時と比較しても改めて思う作品です。
10年以上ぶりに見て思った1番の感想は、こんなにも淡々と描かれていたのだなというベルトルッチのディレクションへの新鮮さです。
もちろん伝記映画なのであまりに派手派手しくはならないだろうと言えども、台詞は動向を伝えるための最小限に抑えられた上で、あの紫禁城でのロケーション含め圧倒的なスケールをバックに、溥儀の身に起こるイベントを実に淡々と描写する巧みさ。非常に分かりやすく、かつゴチャゴチャしない群像劇のシンプルさから来る説得力も見事です。
その淡々さが目についた中で、しかしながらこんなにもラストの余韻を醸し出すことができるのは、偏に溥儀のそのあまりに波瀾万丈な生涯故でしょう。
1908年に紫禁城で即位した2歳から、1967年に文化大革命最中に死去した61歳まで、ずっと囚われの奴隷であった彼が、人生の黄昏にかつて自身が支配していたはずの紫禁城へ訪れるノスタルジアとともに、守衛の息子とインタラクトするシーン。本人しか知り得ない虫壺を取り出しては、彼がその生涯を終え漸く囚われの身から解放されるように、コオロギが虫壺から出てくるメタファーは出色の出来です。
淡々とした本編の中で唯一ちょっとマジカルと言いますか、ファンタジックなシーンな気もしますが、思えば回想として2時間半も長く描かれる彼の身辺の出来事は全てここに帰結するための布石であったと。
実際には恐らく最後まで中共に良いように使われた人生だったのだろうとは思いますが、それでも最後のシーンを見る度に、この世の理とも言える栄枯盛衰に思いを馳せ、そして彼の壮絶な生涯の旅立ちがどうか幸せなものであったことと願わざるを得ないのです。
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