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アメリカン・ハッスルのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・ハッスル(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

79年、ラスべガスに続くカジノタウンとして開発中のアトランティックシティ。詐欺師のアーヴィンとシドニーを逮捕したFBI捜査官のディマーソは、司法取引で2人を捜査に協力させ、偽のアラブの大富豪をエサにした巧妙なおとり捜査によって、カジノの利権に絡んだ汚職政治家やマフィアたちを逮捕しようとするが…。

標的とする人物を信用させて働く詐欺、いわゆる「コンゲーム」を描いているが、本作で面白いのは騙し合いやどんでん返しのストーリーではなく、豪華キャストによる濃いキャラクターの悲喜交々。

1970年代にアメリカで起こった「アブスキャム事件」なる収賄スキャンダルを映画化した実話ベースのクライム・コメディの佳作。

主人公の詐欺師アーヴィンの登場からしてキャラクター描写が濃い。
ハゲ散らかした頭を、残った毛髪を器用に寄せて、部分カツラで見事にカバー。
もう見た目からして嘘なので、とても胡散臭い。
「コイツは巧妙な手口で人を騙す嘘つきです」と言わんばかりの象徴的なシーンだ。

アーヴィンと彼の愛人のシドニーは、標的となるアトランティックシティのカーマイン市長に近づくが、2人の仲を嫉妬するアーヴィンの妻ロザリンが出しゃばり、おとり捜査の邪魔をする。

アーヴィンは、もはや愛の冷めた悪妻ロザリンに支配されているが、それは彼女と別れたら、最愛の息子の親権を奪われてしまうからだ。
外では偉そうだが、家庭では服従するしかない姿が情け無い。

働かず、家事はろくにせず、常に自分は正しいと上から目線で夫に説教するロザリン。
こんなに人を不愉快にさせる女性はなかなかいない。
どうしようもない悪妻のロザリンでも、腹を痛めて子を産んだ母なので、親権はとれるというのが皮肉だ。

そんなダメ夫のアーヴィンが騙すことになるのは、一見、人の良いカーマイン市長。
町のことを誰よりも真剣に考え、愛する郷土のために身を捧げる男だが、実は政治家として地元マフィアとの付き合いも必要悪だと容認している。

FBIのディマーソは出世欲の塊。
作戦成功にはアラブ人富豪が賄賂として支払う莫大な見せ金が必要だと申し出るが、許可を出さない頭の硬い直属上司を殴り倒してしまうほど、目の前しか見えていない。
婚約者もいるのに、憎むべき犯罪者であるはずのシドニーのセクシーさにやられて手を出そうとするほどクズだ。

シドニーは妻の尻に敷かれ、一向に離婚してくれないアーヴィンに嫌気がさしているが、アーヴィンの才能に惚れていて協力を惜しまない。
ディマーソに言い寄られても拒否しないお人好しだ。

濃いキャラクターたちの思惑と膨れ上がる予算、そしてマフィアが絡んで命の危険が迫ったりと、ドタバタするのは笑える。
しかし、コンゲームとしては肝心の騙す側の手の内が見る者にバレバレで、しかも慌てふためいてばかりで、どう見ても上手く行きそうにない。

事件は賄賂を受領している政治家たちを何とかビデオに録画することに成功し、市長を含む関係者を全員逮捕できたが、単なるラッキーでしかない。
コンゲーム映画に見られる華麗なる騙しのトリックが発揮されないのは、やはり不満だ。

だが、結末は意外にもハッピーエンドである。
事件は解決したが、用意した賄賂のうち200万ドルがいつの間にかに消えていた。
ディマーソは責任を問われ、ちゃっかり着服したアーヴィンとシドニーは証拠不十分で、当初の約束通り免罪を受ける。
アーヴィンはロザリンと離婚して息子の親権を取り、シドニーと今度は贋作で詐欺などせぬ真っ当な画廊を経営する。

全員がどこかおかしいのに、本当に悪い奴が見当たらない。
豪華キャストが演じるどの主要キャラクターも善と悪の側面を併せ持ち、人間臭い。
そこに実話のリアリティがある作品だ。
ストーリーではなく、役者の演技が見どころの作品である。
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