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バタフライ ルームのくりふのレビュー・感想・評価

バタフライ ルーム(2012年製作の映画)
3.0
【47年後の“コレクター”は、廃業できぬ魔女】

アマプラにて。最近『血ぬられた墓標』再見でバーバラ・スティールに惚れ直し、毒を食らわば皿まで、と老いた彼女の近作、覗いてみる。

蝶の収集家が集めるのは、どうやら蝶だけじゃない…と来れば、『コレクター』(1965)の現代版変奏と予想します。実際どうだったかはココでは書けませんが…意外性はなかったですね。とっとと真相を明かして、次の新味ある驚きへと進化してほしかった。

人里離れた屋敷に潜み、ひっそりと趣味に没頭する『コレクター』と違い、都会のど真ん中でさらに趣味が暴走し、犠牲者もマシマシ…というのが現代味。比べるとそこは面白い。

10年前の作品で、微妙な古さが漂う上、語りと演出にキレがなく、87分を異様に長く感じます。元々は監督自作の小説を短編映画にして(Alice dalle 4 alle 5 )、そこから長編化したようですがこの方、他に映画は殆ど作っておらず、映画監督にはきっと不向きなのでしょう。

かつて魔女も演じたホラークイーンと、かつてフレディ・クルーガーに追い回されたスクリームクイーンが母娘って明らかに狙っていますが、そこに頼りすぎたのでは?バーバラさんは、役作りを全くやっていないように見えるし、ヘザーさんは終始ハイで、おかしい。

レイ・ワイズも『ツイン・ピークス』のアノ役前提だと思いますが、けっきょく活躍せず、腰砕けな人物で終わりました。何かダラダラ残念なカンジで終わる人が多いですね。

せっかく枯れかかった魔女が、魔少女に出会い火がついちゃって…という話でした。この火元は現代味ですが、人の心の残酷さを、より掘り下げた上でホラーに盛ってくれないと、ただのお化け屋敷に陥りがち。ただでさえ、バーバラさんは風貌がコワく見えるのだから。

バーバラさんが『何がジェーンに起ったか?』のベティ・デイヴィスのように成れるとよかったのですが…この企画脚本ではまあ、ムリか。

魔少女の美少女ぶりは眺めて飽きなかったものの、当然あると思った、これぞ残酷美!と見惚れる決め画は出てこない...。演じた彼女自身もその後、活躍していないようですね。

振り返ると、冒頭ナイスなタイポグラフィーと“鮮血少女”以上の、インパクトある画は出てこなかったように思います。

<2022.9.24記>
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