一人旅

再会の街での一人旅のレビュー・感想・評価

再会の街で(2007年製作の映画)
5.0
マイク・バインダー監督作。

NYを舞台に、妻子と共に順風満帆な生活を送りながら心にどこか虚しさを感じている歯科医:アランと、彼の大学時代の友人で9.11アメリカ同時多発テロで妻と3人の娘を一度に喪った悲しみから心を閉ざしている元歯科医:チャーリーの再会と心の触れ合いを描いていく人間ドラマの秀作で、ドン・チードル&アダム・サンドラーの名役者二人が境遇の異なる歯科医を演じています。

妻子を喪ったことで重いPTSDに苦しみ続けているチャーリーと、彼を心の闇から救い出そうと懸命に努めるアランの男同士の交流の日々を描き出していく人間ドラマとなっていて、いくら一緒に過ごしても自分のこと(特に亡くなった家族に関すること)を話そうとはしないチャーリーに粘り強く寄り添い続けるアランの人としての優しさと誠実さに胸を打たれます。妻子が亡くなって以来、頑なに心を閉ざしてきたチャーリーの“心の回復”を、いくら突き放そうとも親身になって傍に居続けてくれるアランとの関わりを通じて導き出していく人間ドラマであり、本作は9.11で傷つき苦しんだ総ての人々に対するマイク・バインダー監督からの一つの答えでもあります。

本職はコメディアンであるアダム・サンドラーがPTSDに苦しむ孤独な男を繊細に演じ切っていて、他者から家族について問われた際の心の動揺&暴挙は迫真の熱演となっています。また、彼に寄り添うもう一人の歯科医に扮したドン・チードルもサンドラーとは対照的に理性派な役柄を好演していますし、セラピスト役のリヴ・タイラー、判事役のドナルド・サザーランドも適材適所のキャスティングとなっています。
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