けーはち

THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!のけーはちのレビュー・感想・評価

3.7
アイマスといえばここ十数年ゲーム・アニメに出る女性声優がアイドル化する風潮を牽引したアイドル育成ゲームだが、そのアニメの劇場版完結編が本作。プロデューサーが離任する最後のイベントに向けて合宿練習〜本番までを描く。

基本的にはアイドルのワイガヤと歌と踊りを眺めるMV+環境映像みたいなものだが、ライブ本番に向けた土壇場で「バックダンサーの1人が失踪→全員で捜索し詰問→ストレス太りと判明」の一幕が入る。公開オーディション番組から始まったモー娘以降のアイドルは、歌・ダンスといった舞台での姿は元より、舞台裏の喜怒哀楽や、仲間内で鎬を削る姿、絆、感情のぶつかり合いなども込みでコンテンツとして見せる、いわばスポ根リアリティショー。本作もアイドルが「諦めるなと説得→懸命に練習→元通りの体型に」と仲間内で問題を処理する。保護監督する大人はいない。この一件で努力する若者を見世物化するアイドル産業の姿が戯画的に表現されているのである。

そんな風に捉えるのはもちろん穿った見方でしかなく、大人が出しゃばらず問題を仲間の絆で解決するのは普通のファンとしては望ましい結末であり、ここはリーダー春香さんの粘り強さ、情の厚さに感動する場面であろうと思う。少し過食した程度すぐ戻るさ若いんだもの、と軽く捉えるべきだろう。とは言え、アイドルの何たるかがこの上なく滲み出ている象徴的なひとコマだと思う。

余談だが「太る→痩せる」というほぼ同じ展開を『ラブライブ!』でも見かけたので、やはりアイドル女子の苦悩を視覚的に明解な形でかつ口当たりを重くし過ぎず描こうとすると体重・体型あたりは鍵になるのか。

楽曲や作画はもちろん2010年代のアニメとして佳良で高水準。もう少しライブシーンがあっても良かったと思うのだが、ファンへの御褒美コンテンツとしては十分とも思える。