蛙鳴喧騒

サタンタンゴの蛙鳴喧騒のネタバレレビュー・内容・結末

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

わざとらしく閉められるドア、ドア枠だったり四角に囲われる人物など閉塞感の演出がすごかった。また、とにかく長く使われる間が将来への期待の薄れや退屈感を感じさせた。特に酒場で皆が踊るシーンのやるせなさたるや。あんな将来しか待っていないのかと考え少女が命を絶ったのであろうことにも納得してしまった。真剣にあの場末の片田舎のつまらない空気に何らかの終末がもたらされることを期待してしまった。
秩序と自由では秩序の方が恐ろしいという。秩序は退屈した安定をもたらし、明るい未来を期待できる環境やそこに向かって進む力さえもその支配下に置くことができるからなのではないか。そして秩序がある環境に安心するように我々はプログラムされており、その先に待つ暗い将来に気付く事も難しくできている。
また自由と秩序や、その他全ての対立構造にあるように思われるこの世の事象や要素は対極に位置しているのではなく、一続きの円環の上にあるのではないか。自由のすぐ横に秩序があり、また秩序のすぐ横に自由があるのではないか。タンゴのステップのように我々は簡単にその対立構造を行き来することができる。遠く離れて存在しているのではなく円環上にあるからだ。だから最後のチャプターは「輪は閉じる」なのかもしれない。
蛙鳴喧騒

蛙鳴喧騒