MikiMickle

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.0
1961年ニューヨーク。
ライブハウスでフォークソングを歌う男がいた。彼の名前はルーウィン・デイヴィス。
なにをやってもうまくいかない。贔屓にしてくれている教授のネコは逃がしてしまうし、やっとつかまえたと思ったら違うネコ。女友達に手をだして妊娠させてしまったり。
家はなくて友人のところを渡り歩き、レコードも売れない。
そんな彼が、ネコと共にシカゴへと旅立ち、またニューヨークへと戻ってくる1週間の話。


あのボブ・ディランが憧れたと言われるフォークシンガー、デイブ・ヴァン・ロンクの回顧録を脚色した本作。

正直、前半はルーウィンに全く感情移入出来なかった。
でも、後半、彼がデュオを組んでいた相方の事や、フォークに対しての気持ち、女友達への感情、年老いた父親……
様々な事を見ていくうちに、おもいっきり引き込まれてしまった。

60年代のフォークシーンを垣間見ることも出来た。
メディアも発達していない時代に、どうやって売れていくのか。
ルーウィンの歌う曲は、本当に心に染みて、フォークを全く通っていない私にも響くものがあり、しかしながら、友人の歌うどうしようもなくバカっぽいくだらない歌が売れていく。

そんなあるミュージシャンの、大変な1週間に凝縮された、音楽と共に生きた人生の話。

監督・脚本はコーエン兄弟。
彼らの作品はほとんど見ているけれど、好きなのだけれど、作風は言われたらうまく説明できない。まだまだ修行が足りない…

2013年カンヌ審査員特別グランプリ受賞。

ルーウィンを演じるオスカー・アイザックのトロンとした目が印象的。
変な歌が売れる友人にジャスティン・ティンバーレイク。(そんな役に出たことで好印象w)
ジョン・グッドマンの変な感じも良いし、
「オンザロード」でニール・キャサディーを演じたギャレット・ヘドランドがシカゴまで運転していたり、「アマデウス」のサリエリ役のF・マーリー・エイブラハムが音楽プロデューサーをしていたのも、意味深い。

旅の途中、トイレの落書きに
What are you doing?
と書いてあるのを見る。
なんだか心にくるシーン。

最後に、ボブ・ディランらしき人物が歌を歌う。時代は引き継がれるのだな。
MikiMickle

MikiMickle