このレビューはネタバレを含みます
大阪で2010年に起きた2児放置死事件を基底として、親による育児放棄を「孤独感」という観点から描いた作品です。
最初のうちは登場人物の「幸福」そうな様子を描いているのですが、だんだんと「不幸」の影が全体を支配するような作りになっているため、暗い映画というよりは重い映画で、だんだんと観るのがつらくなってきます。特に、子供のいる女性にとってはつらい作品かもしれません。
この作品は、育児放棄を引き起こすのは「誰なのか」ではなく、育児放棄を引き起こすのは「何なのか」という問いが根っこにあります。自分の子供を放置して死なせるという結果を生んだのは確かに母親なのですが、全部が全部母親が悪いというふうに言い切れない部分もあります。
この事件の発生は、子育てに一切関知しない(ように見えた)父親にも原因の種があり、また、子育てをする親を支えるための公的サービスが不充分であったことも遠因となっています。事件の原因が1人だけに(あるいは1つだけに)帰されるのではなく、いろいろな要因が複合的に絡んだ結果、このような悲惨な事件が引き起こされてしまったのだというのを、この映画は伝えています。
映画では、次子である長男が先に餓死し、長子である長女は、母親が帰宅した際に水を張った浴槽の中で溺死させられます。もちろん母親だって本当は子供たちを幸せにしたかっただろうと思いますし、自分も子供たちと一緒に幸せになりたかったはずです。
この映画はまさに、育児放棄と「孤独感」との関係について多くの人に関心を持たせるための映画であるように感じました。