ちろる

あなたを抱きしめる日までのちろるのレビュー・感想・評価

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
3.7
アイルランドの抑圧された女性たちの歴史を描いた作品はいつも観るだけで苦しみを伴う。
ストーリーは年老いた主人公フェロミナの回想から始まる。
老い先短い身の上につっかえて離れないのは探し求めた息子の存在だけ。
静かに、表情も大きく変えることもなく、淡々とさえ見えるジュディ リンチの哀しみの演技がこの作品の全て。

教会という大きな組織を盾にして、その影に多くの少女たちが悲痛な叫びを上げ続けたそのほんの一部の実話がこうしてマーティンによって世の中には出たことは、運命に導かれたと言わざる得ない。
愛する息子とささやかな生活を夢見た女性にとって、前触れもなく息子を奪われるとはどんな思いだったのだろう。
たった一度だけ、死に行く前に会えることだけを信じていた2人が求め合うのにも関わらず、それを阻むのは間違った倫理観を振りかざしたシスターの存在。
なんとも痛ましい。
腹立たしいのでマーティンの気持ちになってしまう。
フェロミナの選択はとてもクリスチャン的でこのように到達するのは到底私には難しいと思ってしまう。
しかし
エンディングに流れる写真に、彼らの抱えた全ての人生を改めて噛み締めて、人との出会いはやはる全て必然なのかもしれないとふと考え直させてくれた。
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