碧井

ノスタルジアの碧井のレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
5.0
難解な作品としておなじみの本作品をようやく鑑賞できた
結果としては、この作品の持つ魅力に圧倒され、難解という感想を抱くことはなかった
かといって作品に込められた意味を適切に解釈することができたというわけではなく、せめて正確にあらすじを書こうにも文章にするとちんぷんかんぷんなのは周知の事だろうし、解説するほど深く理解もしていない
ただ素晴らしかった
どこを切り取っても美しい映像の連続を、いつまでも終わらないでほしいと思った
ずっと観続けていたい、と思う作品に出会えた喜びに震えるような気持ちで鑑賞した
この作品の世界観にビショビショに浸り、ずぶ濡れになるのが心地良いと思うのは、映像の中に象徴的に水(雨、温泉、泉、霧など)が出てくるため、漂う空気の湿度が高いためではないだろうか
決して多くはない不思議なセリフ、抽象的な音楽、複雑に絡み合うように変化するモノクロとカラー、息が止まるほど美しいシーンの連続、そのなかで時間がゆっくりと流れている
以上のことから退屈さは微塵もなく、驚くほどあっという間の(どちらかといえば興奮ぎみの)2時間だった
さすが映像の詩人、というよりも、
タルコフスキー先生まごう事なき大天才なのですね
素晴らしい作品に出会えて本当に嬉しい
映像の美しさといえば、イタリアの自然も大層美しいですが、アンドレイの泊まっているホテルの無機質な部屋と廊下は、哲学者であり建築家でもあるヴィトゲンシュタインが設計したお姉さんの家みたいで素敵だし、ドメニクの住む雨漏りの酷い家とそこにどこでもドアみたいなドアが唐突にあるのもかっこいいし、泉の湧く廃墟のような建築の透明感も印象的だった
この作品の中で効果的に登場する建築たちの意匠的な意味での面白さもまた素晴らしく、その映像美に唸りました
碧井

碧井