タラコフスキー

グランド・ブダペスト・ホテルのタラコフスキーのレビュー・感想・評価

5.0
ウェス・アンダーソンの作品はどれも素晴らしいけど、何度でも見たくなるし何度見ても飽きない気持ちが強いという意味では、個人的にこの作品が一番ということになるだろう。

まず目を惹くのはその入れ子構造で、小説を読む少女から小説の作者がホテルに訪れた時間、そしてそのホテルのオーナーの回想へと移行する様が面白く、ここまでどんどん深く進行していく入れ子構造はサラトガの写本以外知らなかったものだから中々に感嘆した。

そして本題の回想パートへ移行すると、いつも以上に鮮やかなウェス・アンダーソン演出に惚れ惚れして、ホテルの模型やミニチュアを使った少し間抜けな演出も逆に映像を面白く見せようとする工夫のように感じられ、やはりこの監督はユニークな映像を作ることにとにかく重点を置いているというのが端々から伝わってきて嬉しくなった。

キャスト陣のコミカルな動きもさながら古き良きコメディ映画を髣髴とさせるものがあり、おそらくこういう動きが面白いこともあって何度も見たくなるんだろうと我ながら思ったけれども、ここでも映す対象が面白ければ映像も面白くなるという監督の古典映画に通じる考えが窺えるようで、チャップリンやキートン時代のコメディも好きな身として楽しめるポイントとなっていた。

兎にも角にも荒唐無稽な物語展開もさることながら古典的かつ大胆な表現が実に楽しい様は流石ウェス・アンダーソンとそのチームといった具合で、映画を作る毎に洗練されていく手腕によりベルリンやアカデミー賞で注目されたのも至極当然というものであるけど、次作の犬が島のようにこれからもその手腕と独特の世界観で魅了してくれること請け合いだろうから、彼の新作というのは現在最も楽しみなものの一つかもしれない。