コミヤ

グランド・ブダペスト・ホテルのコミヤのレビュー・感想・評価

4.0
ウェスアンダーソン作品復習。

複数人の語り手による重層的な語り口によって「物語を語る」ことの意義を再認識させてくれるような作品。

非人道的な戦時体制の中でも決して揺らがなかった信念は戦争の暴力により一瞬にして捩じ伏せられてしまう。
しかし人間にはその信念を何年も先の世代にまで伝える力を持っている。つまり「物語を語る」ということ!

ある人の実体験が口伝いで他者に伝わり、それが本となり、映画となる。そうやって人の一部は国の垣根と時代を超えて今を生きる我々にまで届けられ、今後も伝えられ続ける。これこそ映画を含めた全ての芸術作品が持ってる最強の力。そしてこの映画は戦争により抹殺され歴史に埋もれた偉人とそれを後世に伝える全ての表現者に捧げた賛歌なのだと感じた。

このテーマを集約するラストシーンに至るまでの過程には本当に心が震えた。
この思いの伝播は「ちはやふる」、「KUBO」、「この世界の片隅に」などで度々描かれてるけど毎回感動してしまう。

そしたこのテーマを監督の度を越した美的センスでもって超絶キュートに描いてるというところも好印象。

でもウェスアンダーソン作品は意識的になのかクライマックスで盛り上げるということをしないカタルシスを排した?作りになっているので毎回ストーリーの面で物足りなさを感じてしまう…もしかしたらこの淡々とした結末が作品のテーマや悲劇性を際立たせるのに効果的なのかもしれない。

アガサ可愛すぎ。
コミヤ

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