【ウディ・アレンを観よウディ!】
ウディ・アレンの映画は、最初にキャスティングがクレジットされる。バックには古ぼけた音楽が流れながら。この懐古主義が好き。
実業家であるハル(アレック・ボールドウィン )と結婚し、セレブな生活にどっぷり浸かっていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)。夫が詐欺罪で逮捕され、全財産を失った彼女は、それでもヴィトンの鞄を引っさげてファースト・クラスの飛行機でサンフランシスコへとやって来る。異母姉妹であるジンジャー(サリー・ホーキンス)の家で暫く住まわせてもらう為に。
犯罪者の夫に酷い目に遭いつつも、二言目には「ハルが〜、ハルが〜」と過去の栄光に囚われたジャスミンの精神状態を表す様に、物語は今と昔を行ったり来たり。
ケイト・ブランシェットの怪演!
骨の髄まで贅沢な暮らしが染み付いたジャスミンに成りきっている。誰も聴いていないのに、独り言をベラベラベラベラ。ヒステリックに叫び狂い、頭痛がすると6種類の抗鬱剤をカクテルと称しながら口に放り込むビョーキウーマン。痛々しいけど、いつまでも見ていたくなる中毒性を持っている。
そして、サリー・ホーキンスもまた別の意味で痛々しい、ちょっと頭の弱いジンジャーを好演。遺伝子レベルでジャスミンに劣等感を抱き、粗野で乱暴な男にばかり惚れ込んでしまうダメウーマン。
この演技派女優が織り成すアンサンブルが、不協和音を奏でているのにおもしろ可笑しい。
テイストで言えば、「女と男の観覧車」と同じ悲喜劇。痛々しい女性を主軸に、物語をくるくる回している感じ。
ウディ・アレン作品の中でもファンタジックなものより、ひりひり痛むリアリスティックなこの類いの作品の方が好きだな。