モリアーチー

ミケランジェロ・プロジェクトのモリアーチーのレビュー・感想・評価

3.0
冒頭ゲントのシント・バーフ大聖堂から運び出される『神秘の子羊』。期待は大いに高まったのですが、なぜだか前半は歴史番組の再現フィルムのようで、後半はB級戦争映画になるというとても残念な作品です。

“MONUMENTS MEN”という原題はナチに奪われた美術品を奪還する連合国の特殊部隊のコードネームなのですが、前半はまだDデイ前でパリも占領されており、部隊は各地に散っているのでかなり散漫でかつ冗長な展開になっています。

退屈な前半を乗り切って、イギリス人とフランス人の隊員が殺され、米軍だけの部隊になると俄然動きが加速して次々と美術品を発見し成果を上げます。最後に東から攻め寄せるソ連軍の略奪部隊の鼻を明かすという音楽までもが1960年代ハリウッドB級戦争映画のような米軍無双映画になってしまうのです。

邦題の『ミケランジェロ・プロジェクト』って何?となりますが、ブルージュの聖母教会にあるミケランジェロの聖母子像を取り返したエピソードに依ります。冒頭の『神秘の子羊』も同じ場所で発見して奪還したのですが、後から盗まれた聖母子像の方にフォーカスしているのは、最初に殺された英国人隊員が守ろうとした美術品だったからということで、それならそれで描き方もあっただろうに、何か釈然としません。

出演者は監督・脚本・製作兼務のジョージ・クルーニーをはじめ、マット・デイモン、ケイト・ブランシェットと言ったオーシャンズ系、『モナーク』のジョン・グッドマン、『ダウントン・アビー』のヒュー・ボネヴィル、『ゴーストバスターズ』のビル・マーレイ等豪華ですのでそこそこ楽しめます。

なお、パリから帰ったナチ親衛隊員の農場に飾られていたルノワールは『可愛いイレーヌ(イレーヌ・カーン・ダンヴェールの肖像)』です。今はチューリッヒ美術館に寄託されていますが、悪名高いスイスの元ドイツ人武器商人エミール・ゲオルク・ビュールレの作った財団の所蔵品です。日本には何度か来ていますが、一番近いのは2018年《至上の印象派展 ビュールレ・コレクション》でした。
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