genarowlands

とても素敵なこと-初恋のフェアリーテール-のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.0
二人の少年の恋が、家族と隣人の人生に希望と転機を与えるいいお話。
LGBTQの映画の中でもランキング上位にあるのに全く知らなかった作品。

イギリスの労働者階級に生きるシングルマザーの息子ジェイミーと父親から暴力を受けているステイ。団地の隣人なので、一時避難に度々ジェイミーの部屋にステイを泊まらせていた母サンドラ。パブ勤めの母は母で、ペンキ職人の若い恋人トニーと一緒にいる。もう一方の部屋はリアがシングルマザーと暮らしているが、リアは度々薬でトリップし、夜中に大音量の音楽をかけ踊り歌いまくる。


俳優誰も知らず、あまり魅力的に見えない登場人物たち。地味だなあと、興味を持たずに観ていたら、少年二人が恋に目覚めていくところから、周りの人々が不思議な魅力を放つようになり(特にジェイミーの母サンドラが)、それぞれの人物の人生の問題が明らかになってくる。先行きへの不安と、ここまで這い上がってきた苦労が重なり、それでも希望を忘れずに、なんとかこの停滞した人生を抜けようとするエネルギーがあった。

淡い恋を隠せなくなり、周囲に知れ、いじめを受ける二人の人生への恐怖や悲しみが痛々しい。少年二人の恋と成長がテーマであるが、まだ人生の緒にもついていない二人がこの先、さらなる困難にぶつかるのは容易に予想され、それを守り、支えて行こうとする母が最強の主役にみえた。

二人の隠せない恋心が周囲を変えていく。

口の悪いリアがだんだん可愛くみえてきて、母の若い恋人は気弱だがいい人で(渡辺篤郎さんを彷彿させる)、ミニスカの母の強さが泣けてくるほど愛があり、素敵な人たちだった。

余韻が素晴らしく、ラストシーンは永久保存版。
genarowlands

genarowlands