くるみ

鑑定士と顔のない依頼人のくるみのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2013/12/21
物語は、美しい計算式であると感じるときが多い。
伏線を張るのが足し算で回収が引き算、隠喩は途中で明示され、謎は暴かれ、小道具は正しく使われ、増えた登場人物は役目を終えたら減って行く。
すべてが完璧に動作したとき、物語は美しい答えを導き出す。
その造作の素晴らしさに、私たちはため息をつくのだ。
まるで、芸術品を見たときのように。

ゆえに、真にエモーショナルなものは、途轍もなく精巧な歯車とバネの集合体ではないか。
ラスト、鑑定人に「偽物のなかにも本物が潜んでいる」と繰り返す機械人形は、完璧な動きで鑑定人の動きを追う。
あの目の形のいびつさを、鑑定人は美しいと思ってしまったんじゃないだろうか。

いくら美しい物語、精巧な計算式でも、最後がゼロでは意味がない。
真実を見抜く鑑定人は、これからも「偽物のなかの本物」を待ち続けるのだろう。
たとえ、来ないとわかっていても。
くるみ

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