凄い作品。
最初から最後まで、複雑に絡み合った歯車が噛み合って、ある結果に結びつく。
物語の初めは、一つであった歯車が、ある依頼をきっかけに、一つひとつ歯車を増やしながら、やがては自分でも止める事が出来ないほど大きな機械仕掛けのようになっていき、自分の知らないところにまで歯車の動きが及んでいることを知る事になる壮絶な話。
物語中に出てくる小物や台詞は、どれもが歯車のひとつになっており、どれひとつ欠けることなく結末に結びついており、見逃す事が出来ない。
緻密なストーリー構造に乗っかっているのは、生身の女性との関係を持ったことがなく、鑑定士の仕事柄、美術品の美女絵画を恋人代わりに慰めを得る変わり者の年配男性の、人生終盤に訪れる初恋をとりまくあれこれ。
年をとってからの恋愛というものを考えるきっかけにもなるし、観客の自由な想像に訴えかける要素は満載。
主人公の心情を表す3D旋回マシーンの描写は、非常に秀逸。
長回しのラストシーンは映画を振り返るに十分な時間を観客に与え、主人公の気持ちと同化する効果をもたらすとともに、話の緻密な構造に震え上がらせる秀逸な仕掛けとなっている。
いや〜、洗練され完成された面白い映画を観ることが出来た。