あや

鑑定士と顔のない依頼人のあやのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

まず、邦題、どうなの笑
この邦題だと、依頼ないし依頼人の謎を解くミステリなのかな?と想像させると思うけれど、
実際には(ミステリはミステリなんだけども)人間ドラマな部分が大きい。

ジェフリー・ラッシュ演じる鑑定士ヴァージルは傲慢なほどにドライで、女性との関わりを一切持たない人間。そんな彼はある日、謎めいた依頼を受ける。
依頼人・クレアに惹かれた彼は心を開き、クレアも彼を受け入れ、二人は結婚することになる。
結婚と同時に引退を決めたヴァージル。だが、引退パーティーから帰った彼の家にはクレアはおらず、秘密のコレクション部屋はもぬけの殻となっていた。
全ては仕組まれていたのだ。
大切なものを失った彼は心を喪失し、クレアの思い出に浸りながらパリの店で食事をする…。

映画としては面白い。
冒頭の高級レストランと最後の食事シーンが良い対比を成している。
二人の恋物語は順調なのに、所々で不穏な気配を匂わせる。
オートマタというモチーフ。

ただ、個人的にはどうにも、後味が悪い。
人間的になっていくヴァージルに感情移入して見ていたので、ラストで明かされる裏切りには、そこまでしなくても!という不快な辛さがあった。
あの年齢の人をそこまで追い詰めなくても…というか。
長年才能を貶されながらヴァージルの”仕事”に加担してきたビリーの積年の恨みは、余程の物だったのだなあとは思うが。
せめてクレアには、ほんの少しくらい(同情でもなんでも良いから)ヴァージルに対する気持ちがあったと思いたい…。
自失状態で暮らしているヴァージルの様子は本当に居た堪れない。
最後のパリでの食事シーンはきっと想像、妄想なんだろうと思うと余計に。裏切られたのにどこか幸せそう(コレクションや財産を失ったが、恋をして人間的喜びを得られた?)なのも切ない。

美術品や凝った装飾品の素晴らしさと、ジェフリー・ラッシュの名演技は◎◎◎。
あや

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