さわだにわか

極道恐怖大劇場 牛頭のさわだにわかのレビュー・感想・評価

極道恐怖大劇場 牛頭(2003年製作の映画)
3.8
こういう映画に対しては意味不明なカルト怪作だわははとだけ言っておくのがスマートなのだが最初にDVDで観てそれからシネマヴェーラの90年代暴力日本映画特集みたいなやつ(だったはず)で観て今回イメージフォーラムで3度目の鑑賞となったのでそろそろまぁ多少は真面目なことを書いてもいいかもしれないというとで…男の皮を脱ぎ捨てること(処分場の入墨人皮)、男が女になること、兄貴の出産という出来事が照射する女の中の男の(らしさ)、女の中の男(らしさ)、この映画は『チタン』に影響を与えたことでも知られるが、すぐれてポストモダン・フェミニズム的とモチーフと男らしさの解体の出来事で溢れ(「強い男」であるはずのヤクザが名古屋でひたすらそこらへんのオッサンとかオバサンに怯え続けるのだ)、ジュディス・バトラーが言うところの「ジェンダー・トラブル」(ジェンダーの攪拌)の実践編というべき、俺はこれを本当にジョークとかではなく真剣に書いているのだが、フェミニズムないしジェンダー論映画の傑作だと思ってる。その深度においてニナ・メンケスなんかはっきり言って目ではない。

それは三池崇史の他の同性愛もの映画や異常性癖映画…『ブルースハープ』や『46億年の恋』や『殺し屋1』『ビジターQ』などを観れば明らかで…しかしこれから別の映画を観なければいけないのでここらへんでスマホを置く。最後にひとつ書いておきたいのは、昨今はインターネットフェミニズムブームに便乗して映画の女性表象をアクティビズム的にあれこれと論じる映画評論家がいるが、その人が新人ならともかく、ある程度の年齢ならば、ここまで直接的にジェンダー論に切り込んだ映画を公開から今までその観点から読み解けず、未だに三池崇史をまともな評論の対象にすらしないような連中が、フェミニズムがどうとかジェンダーがどうとか論じる資格は一切ないと、ここで断言しておきたい。
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