ブラウンソースハンバーグ師匠

なみのおとのブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

なみのおと(2011年製作の映画)
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ありがとう早稲田上映。もちろん東北三部作を上映してくれたこともそうだし、わたしのような無学歴に早稲田の地を踏む口実を作らせてくれてありがとう。目的地の道のりまで本当に緊張しなかった。だって、わたしのバックには濱口竜介監督がいるのだから。

知り合い同士で、面と向かって話す。対面で椅子に座り、会話を始める前に最初に身分を明かし合う制約がある。その違和感から、つい失笑してしまう人もいる。そして、それらが全てカメラに撮られる。
この会話の異化によって、言葉を引き出す。
このような環境を成立させるには、その発案者が第三者である必要があるのだと思う。例えば、「親密さ」のカップルのように発案者と話者が同じ場合、もう片方の話者にコントロールの支配下にいるような気持ち悪さが生じ、反発が強まってしまうのではないか。結果として、座っていたパイプ椅子を地面にベーン!としかねない状況になる。だから、当事者に介入する第三者という立場として、制作チームがいることに正当性がある。

規範的な正しさを聞く為の映画ではない。被害者として言葉にしなくてはいけないという責務から、むしろ逸脱した「本当」を撮ろうとしていると感じた。