梅田

なみのおとの梅田のレビュー・感想・評価

なみのおと(2011年製作の映画)
-
震災の被災者たちの対話を撮ったドキュメンタリー。監督である酒井耕や濱口竜介と被災者、という座組みもあるけど、大部分は被災者同士の対話で占められていて、しかも夫婦や友達といったもともと近い関係にある人たちに「改めて、あの日を振り返ってもらう」というもの。つまり、日常的に会話をする関係にある人たちに、あの「非日常」の景色を、文字通り真正面から話してもらう、という内容になっている。

ワン・ビンのような長回しではなく、まるで小津映画のような正面からのショットと切り返し。ドキュメンタリーの手法としては珍しいけど、その物珍しさが新鮮だった。先に観た「うたうひと」も同じ手法だったけど、この「なみのおと」の方が主題と形式の相性がいいと思った。
あえて言うけど、別に喋りがうまい人が登場するわけでもない(石巻市議会議員は、酒井の問いにまともに答えられておらず、会話が成立していない。)。でも、そういった市井の人の非日常の語りが、フィクショナルなカメラアングルとあいまって、かなりユニークな浮遊感を作り出していた。
梅田

梅田