コミヤ

なみのこえ 新地町のコミヤのレビュー・感想・評価

なみのこえ 新地町(2013年製作の映画)
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初K2。
『ハニーランド』に続き不可解な気持ちにさせられるドキュメンタリー。話者たちがカメラを意識している時としなくなった時とで発せられる声の質が全く違うのが分かる。これは『ハッピーアワー』冒頭の公園での食事シーンからの役者の変化にも通じる。その変化の核心的なタイミングでカメラは対話する人物の真正面に置かれる。そしてカメラに対して真正面を向いた人物同士で切り返しさせる。そこには、実際には正面を向き合っていないのにそうとしか思えない表情や仕草、声が記録されている。『ハニーランド』よりも虚構を前提とした大胆な方法が用いられ、機材やスタッフの存在は2人の間で溶け出している。そして最後の対話では、カメラの前に立つ人への敬意とそれを撮ることの覚悟としてなのか、濱口自身が聞き手となりカメラの前に立つ。(正面ではなく少し仰ぎ見るようなアングルなのは意識的なものなのか)
3/11以前と以後。被災者である以前に新地町で生きた人間であるということ。話すことの喜びについて。話すという行為の背中を押されるし、話す他人の背中を押すために自身の聞く態度を改めさせられる。いや本当に自分は聞く態度を改めねば…
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