骨折り損

レッド・ファミリーの骨折り損のレビュー・感想・評価

レッド・ファミリー(2013年製作の映画)
3.4
ぶっちゃけ期待し過ぎた。

いやでも期待するでしょ。設定が凄く面白そうだったもん。北朝鮮の工作員が偽家族として韓国で暗殺活動って。コメディとしても、サスペンスとしてもワクワクする要素しかない。

なのに、なのに。

キム・ギドクが脚本を書いたからといって、彼の映画の世界観ではない。演出が全然違う。
まず、音楽。今作のハマらなかった点としてこれがかなり大きい。全編通して、劇判はかなり最小限に抑えられているのだが、この演出が裏目に出ている印象を受けた。ブラックコメディって、登場人物たちは至ってシリアスだけど、見ている側にとってはここが笑いどころって理解しやすい方が笑いやすい。この映画では音楽でその説明がされない分、難しい。もちろん音楽がなくても演出意図を伝える方法は他にもある。ただ、会話の間やカットの構成等もシリアスとコメディの緩急を伝えるのに明確な意図を汲み取りにくかった。

あと、照明と美術も安っぽかった。
とても映画的な内容なのに、画がテレビドラマみたいなやたら見やすい明るさ。全編通して照明の変化も乏しいので、それもコメディとシリアスの緩急を感じにくい要因。家の内装も、広々とした空間に、一つ一つは大きい家具と少ない装飾。ああー撮影しやすそうーカメラ動きやすそうーと思ってしまう。

全体的に世界観の構成が惜しい。
物語に驚きはないけれど、しっかり画面を作り込み、シリアスとコメディの抑揚をつけられれば、ちゃんと面白い作品になりそう。

何でハラハラしないんだろうとか何で笑えないんだろうと深く考えさせられた。
骨折り損

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