このレビューはネタバレを含みます
これは強烈なドキュメンタリー映画だった。
インドネシアで実際に起きていた民間人が民間人を大虐殺した事件が題材。
自らを「プレマン(=元々はフリーマン、自由人の意)」と呼んで、インドネシア政府や地方議員からの指示で共産主義者を殺人しまくっていた、のにも関わらず、現地では英雄として今も罪に問われることなく、好きな服を来て、好きな音楽を聴き、好きなものを飲み食いして生きている。
プレマンという概念は、私たちの言葉で共有できるものとしてはヤクザ、チンピラ、マフィア、ギャングetc...とかそういうものだというが、今は民兵・民間の軍事組織のような形で公認の職業となっている、という。
過去のプレマンを映画にしませんか?ということで、本人達はあたかもゴッドファーザーのようなマフィア達の生き様を描いた映画を作る!みたいなテンションで映画作りが開始される訳だけども、ここでこうやって殺したんだ、と気取った服を着て意気揚々と説明をするシーンや、市場で街の人に田舎の中学生がカツアゲするかのようにお金をせびったりするシーンを、絶妙に引いた絵で撮っていたりするので、記録映像的ではあるのだけどもなんとも珍妙な空気感を作っている。
一方、プレマン達の演技シーンところは、寄らば寄れの精神に満ちていて、躍動感あふれる迫真の寄りシーンが随所に挿入される、というバランス感。
※これはプレマン達用に演技パートのみで構成されたゴッドファーザー的な映画として公開されているのだろうか?
見終わった後に色々と考えが巡らされる訳だが、一番感じたのは、現代においてもこんなにも倫理観・リテラシーみたいなものが途上の国(環境)があるのだ、と愕然としたし、人間はいつだってこういう感じになってしまうものなんだと絶望に近い感情になった。
一見の価値あり。