こんぶトマト文庫

ホドロフスキーのDUNEのこんぶトマト文庫のレビュー・感想・評価

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)
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SF映画の大家『スター・ウォーズ』が上映される、その少し前。
稀代の映画監督、アレハンドロ・ホドロフスキーによってこの世に顕現するはずだった預言書的SF映画『DUNE』。
壮大なスケールと深淵な精神世界を孕んだ映画は、しかして生み出されることはなかった―

魂にその痕跡を残されずにはいられないホドロフスキーの世界。彼が夢見て、そして人類を目覚めさせるために『DUNE』を撮ることを決め、各国を奔走し共に製作する戦士たちを集め、いざ新しい映画を作るのだ、というところで製作が中止となる。膨れ上がった製作費が理由なのか、はたまた劇中でも述べられていたように「ハリウッドがホドロフスキーを恐れたから」なのか、視聴者には定かなところはわからない。
しかしひとつ確かに言えるのは、『DUNE』の萌芽は方々へと蒔かれ、『エイリアン』や『スター・ウォーズ』にメビウスとの共作『アンカル』など、より広く遠く深くへと浸透していき、今なお我々の直ぐ側に『DUNE』の意志が存在しているということだ。「それこそが『DUNE』なんだ」とホドロフスキーは言う。

とは言え『DUNE』が撮れなくなってめっぽう落ち込んでいたホドロフスキーが、代わりにデヴィット・リンチがメガホンを取った『DUNE』を観て「なんてひどい出来栄えなんだ!」と言って元気になっていくエピソードは大変好き。人間こうでありたい。