こんぶトマト文庫

チャイニーズ・ブッキーを殺した男のこんぶトマト文庫のレビュー・感想・評価

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ジョン・カサヴェテス監督による、哀愁たっぷりの間が詰め込まれたフィルム・ノワール。

LAの裏町でストリップクラブを経営するコズモ。借金を返済し終え気が大きくなったその足で向かった闇カジノで大負けをこさえ、マフィア相手に多額の借金を作ってしまう。返済の目処がない中、マフィアたちはコズモに借金を帳消しにする仕事を持ちかけてくる。それは、敵対する中国系組織のボス、チャイニーズ・ブッキーの暗殺だった――

あらすじだけ読んだらもっと派手なドンパチが起きるものと予想したくなるけれど、実際はとてもしっとりとした、コズモを中心としたクラブの日常が描かれており、率直に言えば退屈なシーンも多い。
全編を通して状況の仔細が語られることは少なく、また、丹念に描かれる過程の一方でその先にあるはずの結果がスキップされており、気がつけば事態は既に次のシーンへと移り変わっている、ということがしばしば起きている。
それでいて細部まで手抜かりなく描かれるシーンも多々あり、その緩急が悪くない。

作品の空気がコズモに貫禄を漂わせてくれているけれど、先のあらすじの通り、実際のところ「調子こいて欲をかいて金借りまくって大負けして借金こさえて、人生終わった男」の物語なので、可哀想だけど自業自得な面も強く、同情の余地はあまりない男ではある。
そんな哀れな男の立ち振る舞いが格好良く見えてしまうのは、映画の持つ魔術なのかもしれない。