アキラナウェイ

MUD -マッド-のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

MUD -マッド-(2012年製作の映画)
3.8
月額が高いから元を取ろうとNetflixを徘徊する事が多いけど、たまにはAmazonプライムビデオをぷらぷらとお散歩。

おや?知らない映画。
マシュー・マコノヒー、タイ・シェリダンとキャスティングに惹かれて鑑賞。

こ、こ、これは、良い映画だーー!!
後から知ったけど、第65回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルム・ドールを争ったとの事。
むむむ、納得。

アーカンソーの川岸で、ボートハウスに両親と暮らす14歳の少年エリス(タイ・シェリダン)。親友のネックボーンとミシシッピ川の島で出会った男。マッドと名乗るその男(マシュー・マコノヒー)は、人目を避け、森で暮らしていた。ある者達に追われ、街に出る事が出来ないマッドを不憫に思い、彼に協力する少年達。やがて、彼らの運命は抗えない大きな渦に呑まれてしまう。

白いシャツから覗く右腕には蛇のタトゥー。
拳銃を持ってはいたが、何故か恐ろしくはなかった。

マッドが求めたのは食糧。
そして、ジュニパー(リース・ウィザースプーン)という女性を待っていると言う。

愛し合う彼らの為にと協力を惜しまないエリス。
やがてマッドとエリスは互いに心を通わせる様になる。

嗚呼、歳の離れた友情を描く物語が好きだ!!

そして何より少年達のその姿に「スタンド・バイ・ミー」を重ねてしまう。

ネックボーンの髪型とか、ありし日のリヴァーじゃないか!!

物語の核心に触れるので行間空けます。














殺人犯として追われる身であるマッド。彼の遣いとして奔走するエリスとネックボーンはかなり危ない橋を渡る事になる。

その中でエリスが経験する、人生における不条理。
初恋、失恋。
そして、両親の離婚話。

ボートハウスは解体され、街での暮らしを余儀なくされてしまうかも知れない、そんな将来への不安。

愛し合う男女は何があっても諦めないんじゃないのか。
愛し合うってそういう事じゃないのか。
愛というものがわかりかけているのに、わからない。

エリスの心が掻き乱される。

心の中が無茶苦茶になって、その感情の昂(たかぶ)りをマッドにぶつける少年。

そして、「蛇」と「狙撃手」にまつわる伏線回収が見事な、怒涛の終盤の展開に目が離せない。自らの危険を顧みず、少年を救おうとするマッドよ。泣ける!!

マッドとエリス、そしてマッドとトム・ブランケンシップ(エリスの家の対岸に住む老人)のそれぞれが擬似親子として描かれている点がまた素晴らしい。

トムが、マッドに対して「Come on,son」と呼び掛けているのに、字幕ではマッドとしか訳されないんだよなぁ。これが日本語の限界。「息子よ」と訳すには直接的過ぎるし。それでも、トムがどれだけ毛嫌いしている様に見えても、彼を息子同然に思っていた事が見て取れ、物語に深みを与えている。

終盤の大きなうねりが、観ている者の感情を掻き立てる。
まだ幼さを残すタイ・シェリダンの演技もまた素晴らしい。

胸が震える終盤こそが見所。
おススメです!!